「生きる」

　昨晩、映画「生きる」鑑賞。

日中NHKで放送されていた番組を録画して、夜に観ました。

この映画を観るのは、たしか3回目か4回目か・・・・。

　主演の志村喬という俳優さんは、延岡高校の卒業生。

もともと地元が延岡だったわけじゃなく、お父さんが単身赴任で延岡に来ていたところに、一家で合流したそうなので、ちょうどその年頃だけたまたま延岡にいた・・ということでしょうけど。

昭和の映画やTVでは、見ない日はないくらいに出ていた俳優さんなので、何かちょっと嬉しい・・・。

　映画のあらすじとか、感想はさておき・・・・。

あまりにも有名な黒澤明監督の映画なので、私がグダグダと書くこともないでしょうからね。

　主人公が急にミイラから人間に変わった後の生きざまに心打たれるのは間違いないのですが、私にとっての見どころはもう一つ別のところにありまして・・。

下水が整備されていない高架下の湿地では、悪臭がすごく不衛生なので何とかして欲しい・・・、子供の遊び場になる公園を整備して欲しい・・というその地元の主婦たちが市役所に嘆願に来る場面。

この映画の時代は戦後まだ間もない昭和27年なので、登場する主婦の姿も、割烹着姿だったり着物姿だったり・・・。

　それから時代はもっと新しくなってからのこと。

といっても私が生れる直前のこと。

　私の両親はどちらも県外出身で、宮崎県には縁もゆかりもない人でしたが、父の宮崎赴任が決まって母連れて宮崎県民になりました。

当時、宮崎市には、乳児保育園が一つもなく、乳飲み子を抱えて実家に頼ることもできない女性は、子供を預けるところもなかったとか。

母は、市役所に乳児保育園を作って欲しいと、仲間の主婦たちと何度も嘆願に行ったのだそうです。

でも、公立の保育園はなかなか出来ず、宮崎市で最初の認可外の乳児保育園の設立に関わりました。

　その後も公立（現在で言う認可保育園）の乳児保育園を・・という嘆願を続け、ある時、市長室に子供をおんぶして行ったのだとか。

「市長室に赤ん坊を連れてくるとは何事か！！」とえらく怒られたそうですが、だからこそ、子供を預けるところが必要なのだ・・と食い下がらなかったそうです。

　その甲斐あって、宮崎市に第一号の乳児保育園が出来ました。

市は、熱心に嘆願に来ていた主婦たちの子供を、優先的に入園させてやる・・・という風に言ったそうですが、公立の保育園なのに、誰それの子を優先的に入園させる・・というのはおかしい・・と、正々堂々とお断りしたとのこと。

　その武勇伝を何度も聞いていたので、この映画のあのシーンを見るたびに、母のことを思い出すのでした。

当時、兄を産んですぐだったでしょうから、まだ20代の若い母親だし、昭和40年代に入っていましたので、割烹着や着物・・というあのシーンとは全く違う様相だったことは間違いなのですが（笑）

市役所に嘆願にくる主婦たちを、煙たがり、よその課に行くようにたらい回しする行政の職員のあの感じは、きっと同じような感じだったんじゃないかと想像します。

そんな主婦たちを引き連れて、先頭に立って市長室を訪れる市民課長の渡邊を演じた志村喬は本当にカッコいいのでした。

　この映画の好きなシーンは、胃ガンを宣告された日の晩、一人息子の名を何度も何度も独り言で呼びながら、息子が小さい頃から成長してきた過程を思い出すシーン。

あのシーンは泣けます。

まだ息子が小さいうちに妻を亡くし、男手ひとつで大切に育てて来た息子が、戦時中招集されて旅立っていくシーンはたまらないです。

後の方のシーンで、もと市民課の職員の女性が「でもやっぱり息子さんが一番好きなんでしょ？」と言った時の顔も切なかったですね。

　それから最後にブランコに乗って「ゴンドラの唄」を歌いながら亡くなっていくシーンも、胸に来ますな。

　2022年、カズオ・イシグロ（ノーベル文学賞受賞作家）が脚本を担当し、、イギリス版「生きる　LIVING」という映画でリメイクされたとのこと。

そのイギリス版は、２月に日本映画専門チャンネルで放送予定です。

それに併せ、黒澤明の「生きる」も４Kリマスター版が放送されるとのこと。

忘れないように録画予約します。