奈良へ 旅の記録⑲

　JR京終駅から桜井方面行の電車に乗って、だんだん南に進むにつれて、雲が立ち込め、暗くなってきました。初瀬の山の上半分は、白いもやもやの中に隠れています。
　JR桜井で降りて近鉄線に乗り換えます。乗り継ぎの時間のタイミングが悪く、待ち時間で時間ロスしました。ちょっと奈良市内で時間使いすぎましたな。予定していた電車ではなかったので、想定外でした。

　そして、こんな時間に長谷寺に行くような人は、どこにも見当たりませんでした。雨も降ってるしね。
　長谷寺駅到着。お参りして、また駅に戻って来るのだから、荷物をコインロッカーに入れて行こうと思ったけれど、あいにく財布に小銭が入っていませんでした。千円札で飲み物でも買って、そのお釣りを使えば・・とも思いましたが、この千円札は最後の１枚で、もしタクシーに乗ることになった場合、タクシーでキャッシュレス決済ができないって言われた場合に残しておかなければ・・・とも思ってしまって、結局カバンを持ったまま行くことにしました。
　で、タクシーって頭をよぎったのは、すでにならまち歩きでくたくただったし、雨も降ってるし、カバンもあるし、４時までに入山受付しなればならないのにすでに３時過ぎていたし・・・、駅前にタクシーの１台でもいれば・・と期待したのですが、まったく・・・、人っ子一人いませんでした（笑）。

　ここで迷っていても時間がどんどん過ぎるだけ。お山に向かって歩くことにしました。いや、正直きつかった・・・。お土産も増えたので、カバンも重たくなっていたし、前日よりも気温が高かったせいか、汗だくだし・・・。早くどっかに座りたいって気分。お天気よくて元気があれば、全然平気な道程なのですよ。実際に、もう何度も訪れたことがありますが、駅からの道中でこんなにつらく感じたことはなかったし。

　それでも、これは私にとっての修行なのだと思いました。と、気持ちを奮い立たせて、どうしても行かなければならない・・と。過去記事を検索すると、最後に長谷寺を訪れたのは、もう10年前、2013年のことでした。
そうか、もう10年もご無沙汰してしまったのか・・・。この間、コロナ禍もありましたが、10年というキリのいい数字がまた、何か、絶対に今年行かなければならないというような気持にさせてしまったのかもしれませんな。

　やっと石段の一番下に到着。こっから本堂がある山の上まで、延々と階段が続きます。




　無事に午後４時までの受付には間に合いまして、境内に入ると、まだ人もパラパラと残っていたり、私よりも後から来られる人もいたりして、やれやれでした。長谷寺には、国宝である本堂の中に、国重要文化財の「本尊十一面観世音菩薩立像」がいらっしゃり、毎年春と秋の限られた期間だけ、普段は立ち入ることのできない本堂の中に入って観音様の足元まで行くことができるのですが、今年は10/7～その期間が始まったばかりでした。時間が時間だけに、もう参拝者も少なくて、貸し切り状態で観音様の御足を独り占めすることができました。
　誰も後続の人がいなかったので、しばらく足元に座ったまま茫然としておりました。駅から早足で階段を上りたどり着いた観音様の足元で、流れ出る汗と一緒に目からも汗が出たような気がします。

　帰りの電車の時間もちょっと気にしながら、今回は境内をあちこち散策することはできないな・・と思い、お約束のアングルの写真を撮るだけ撮ってきました。まだ紅葉の季節には早すぎますが、秋が深まったら、さぞかし素晴らしいのだろうなぁ。

　そして今年から「菊回廊」という催しも始まったとのこと。

観音様の特別拝観の期間中、紫陽花で有名な坂に、秋は菊を愛でられるようにしてあるとのことで、それも楽しみにしていきました。

誰もいない菊の階段、こちらも貸し切り状態でした（笑）




　お山の上にいるときに、すでに電話予約したのですが、帰りは駅までタクシーに乗ることにしました。

もう駅まで歩く元気が残っておりません。

階段の一番下に来てくださいって電話でお願いしましたが、車が出払っていて、すぐには来てくれないとのことで、25分ぐらいかかりますよ・・と。
なので、ゆっくりと山を下りながら、菊を見たりして、下山してちょっと一休みした頃に、ちょうどよくタクシーが来てくださいました。

　長谷寺に居た時間は、正味１時間もありませんでした。

本当に慌ただしいお参りでした。

たったそんなことの為に？・・・と思ってはいけません。

奈良に来ていながら、ここに来ずしてさっさと帰ってはいけない・・・どんなに時間が無くても、どんなに疲れていても、ここに来ること自体に意味があるのだということを重々自分に言い聞かせたお参りでした。

　タクシーで行けば、長谷寺から駅までは、ぎりぎりワンメーターで行くかどうか・・ぐらいの距離しかないのですが、今回は到着間際にメーターが動きました。

1000円札を一枚残しておいて良かった。

長谷寺の駅は、この10年の間に無人駅になってしまっていて、お天気のせいもあってか、暗く寂れた駅になってしまっていました。

車社会なので、もう電車で来る人も少なくなってしまったのかな？

　長谷寺の駅から近鉄線で、終点の大阪上本町まで乗りました。

あたりはもう真っ暗になってしまっていました。

急行に乗ったので、停まった駅はわずかでしたが、何度も乗った電車なので沿線の景色は、結構覚えているものですね。

　上本町からリムジンバスで空港に。

そのリムジンバスが、経路上で起こった交通事故で渋滞が発生して、到着が遅れ、いつになるかわからない・・・とのこと。

暗くて狭い待合室にずーっと座っているよりも、どうせ待つなら空港で何か食べながら待つ方がいい・・と思って、おばさんパワーが起きました。

　列を作っていた乗り場の人たちに「タクシー乗り合わせで一緒に空港に行ってくださる方いませんか？」と声をかけると、すぐに３人集まりました。

結構大胆な行動だったと後で自分でも思いますが、集まった３人にはなぜかとても感謝されまして、４人で空港まで和気あいあいと旅の最後、楽しく過ごせました。

名前も行先も全然知らない人たちと・・・・（笑）。

　早めに空港に着くことが出来て、軽く晩御飯も食べることが出来ました。

宮崎行きの最終便に乗って、無事に到着。

空港にまる２日停めていた駐車料金は1800円でした。

　ああ、旅が終わってしまった・・・。

次にまたお泊りで旅に出られるのはいつになるかなぁ。

　その日の晩から数日間、同窓会グループLINEに、同級生からのメッセージがどしどしと入り続けましたが、ようやくそれも一段落し、また当たり前の日常にもどっております。

終わり