お引渡し

　「御料理ふくら」。

本日、建築工事の方は、無事にお引渡しすることが出来ました。

　施主さんに初めてお会いしてから、２年３ヶ月。

飲食店を新築する・・・というご相談を頂いて数か月後、新型コロナで飲食店が大打撃を受けてしまい、こんなご時世に御料理屋さんの新築を進めてもいいのだろうか・・・と悩んだ時間もありました。

　コロナ禍であったことを度外視しても、例のごとく設計に時間がかかってしまって、ずいぶん長い時間お待たせしてしまいましたが、結果的にはこの時期になって良かったのかもな・・・などと自分の力量のなさを棚上げしておりまする。

　細部の納まり、通気の取り方、使用する材料、サンプルの吟味など、「和」の建築の奥深さに戸惑いながら、悩み悩んだ設計期間でした。

だからこそ、この熱を現場に携わって下さる方々と共有していただきながら、納まりについて熱く議論しながら取り組みたかったし、充実した現場になるといいな・・・と期待していましたが、勝手な独りよがりだったのかもしれません。

　工事期間は、当初の契約期間を２ヵ月オーバーしてしまい、ちゃんとお引渡し出来るのだろうか・・と緊張の毎日でした。

最後の最後まで、手直し工事があったりして、今日の今日まで不安でした。

　

　無事に施主さんにお引渡しが終わって、急に寂しさが込み上げて来ました。

いろいろな感情があった現場だけに、ああ、終わるんだなぁ・・・と脱力してしまいそうな・・・。

　何だかんだといろいろありましたが、関わって下さった工事関係者の皆様、私の面倒くさい相談にお付き合いして下さった方々、伝統工芸や伝統技法についてレクチャーしてくださった材料屋さん、水道を貸して下さったお隣さん、その他大勢のご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

　

　私に、「和」を学ぶチャンスを与えて下さった施主さん、大きな試練を与えて下さった建設会社さんに、心より感謝申し上げます。

　作庭工事進行中です。

建物に呼応してくださるように、自然石積みや竹垣、植栽工事まで、おひとりで作業される庭師さんです。

時間はかかるかもしれませんが、人の手で丁寧に作り上げるお庭を、楽しみに待っています。

　竣工写真は、お庭が出来てから撮っていただくことにします。

明日からはもう自由に入れなくなる現場を、最後に未練がましく撮ってから退散いたしました。