引越し

　昼前、写真と共に「終わった」とLINEが届きました。

　今日は息子の引越しの日。

引越し業者さんに依頼はしたものの、荷造り準備や諸事務手続きなどなど、一人で頑張ったに違いない・・。

案の定、昨晩は徹夜でダンボール詰めしたとのこと。

　卒制展が済んだと思ったら、すぐに引越。

今住んでいるアパートの退去が15日までなので、もう少し日程に余裕があれば良かったのですが、ドタバタの毎日だったでしょうな。

いや、まだしばらくはドタバタするのでしょう。

旧居の掃除もすんでいないまま、とにかく荷物と一緒に新居に来たとのこと。

また別日に、旧居の掃除、不動産屋さんと退去日の立会をして、置いてきたバイクに乗って最後引き上げてくるとのこと。

手伝いに行ってやれず申し訳ない気持ちですが・・。

　とにかく今日は、ご飯が食べられて、お風呂に入れて、寝る場所があればいいとして、ボチボチやんないよ、と言ったのですが、徹夜明けで結構ハイになっているのでしょうか、結構やる気満々な様子。

今日の夜から、新しいアパートで寝るのですね。

　たかが引越しぐらいで、そんなに大袈裟なことでもないのですが、一人暮らしの引越しって、個人的になんか切ない思い出が多いので、息子が一人で知らない土地に引っ越して、片付いていない部屋で疲れて一人で寝ることを想像すると、ちょっと切ない気持ちになるのですな。

自由で気楽な学生生活が終わって、社会人としての生活が始まる不安もあるでしょうし。

　私は、大学に入学と共に学生寮に入りました。

4人部屋でした。一緒に入寮する新入生は、香川県出身で、親が引越しの手伝いに来ていました。

私は一人だったので、その日寝る布団も、大学生協に注文していたもので、それ以外の生活道具はほぼ何も持たずに入寮しました。

記憶ではたぶん、入学式の前日か前々日という、ギリギリのタイミングで入寮だったと思います。

なんだか、心の準備もあまりできないまま、４人部屋での共同生活が急に始まって、精神的にキツかったなぁ。

新入生が２人、先輩が２人。

昔の古い学生寮だったから、真ん中に通路があって、小上りの畳３帖のスペースに先輩と２人、布団を並べて敷いて寝る部屋だった。

洗面所もトイレもお風呂も食堂も全部共用で、プライベートな空間は、机と本棚のスペースに目隠しのカーテンを吊るしてできた半畳ほどだけだった。

まだ自転車も無かったから、学校が終わってから、近鉄の駅からＪＲの駅まで、ぶらぶら歩きながら、買物をしたことも思い出すなぁ。

　１年ですぐに寮を出ました。

学科の先輩が卒業するから・・と、住んでいたアパートの部屋を譲り受けました。

入居すると知らせていた日、荷物を積んだトラックと一緒にアパートに来て鍵を開けると、畳替えが終わっていなくて、キッチンの前の板の間に、とにかく荷物を全部下ろされて、その日はお風呂にも入れず、お布団を敷くスペースも無く、毛布にくるまって夜を明かしました。

寒くて、情けなくて、涙がチョチョ切れました。

　大阪市内に就職が決まり、豊中に住んでいた伯父がちょうど転勤で東京に行っており、家が空いているから・・と、一軒家を借りて住みました。

１年後、伯父が定年退職で戻って来るのを機に、またアパートを借りて一人で引っ越しました。

不思議なことに、伯父の家での生活について、どんな部屋でどんな風に暮らしていたのか、全く思い出せないのでした。

社会人１年生の生活がどんなだったか思い出せないなんて、記憶力のいい私にしては本当に不思議なことです。

　引っ越したアパートは、伯父の家と同じ私鉄沿線でした。

何でそこを選んだのかも思い出せませんが、会社からはますます遠くなる場所で、駅からも遠い場所でした。

就職してからの引越しだったので、普通の土日に引越ししたんじゃないかと思います。

夏のボーナスを当てにして、家具を神戸のアクタスに買いに行ったなぁ。人生で初めてあんな大金をいっぺんに使ったなぁ。

そのアパートで阪神淡路大震災に遭いました。

　その後は、結婚を機にまた引越しし、自宅を建てて引越しし、そして別居して引越しし、出戻って引越し・・・。

私の引越しは、自宅の新築で引越しした時以外は、いつも一人でした。

一人で引越しするのは、不動産契約やその他諸手続き、荷造り、掃除、いろいろあって疲れるし、疲れるから精神状態も良くないし、そして知らない土地で初めて寝る日の夜の寂しさや不安はなぜかよく覚えているものです。

そんな自分の引越しにまつわる思い出が、いろいろよみがえって来ました。

　引越しして新しい部屋で初めて寝る夜、せめて温かい部屋で、食べる物に困らず、リラックスして過ごせますように・・・・。

寂しく切ない思いをしていませんように・・・・・。