きらら延岡研修旅行 その10

1月11日

■宝亀教会（ほうき教会）（長崎県指定有形文化財）
1898年（明治31年）　　木造一部煉瓦造　　　大工：柄本庄一

平戸市内に現存する最古の教会。
構造は基本的に木造で、ファサードのみ煉瓦造。煉瓦部分も塗装仕上げで、煉瓦の素地の赤茶色が見えているわけではない。
特徴的なのは、ベランダコロニアルが側面に設けられていること。西洋諸国が熱帯地方の植民地によく採用した様式で、長崎市内ではグラバー邸などにも用いられている。島の気候風土にマッチしていたのか、当時まだあまり普及していなかった西洋建築だけに、グラバー邸などの模倣をしたものなのか・・・？はわからないそうです。

内観の天井は、実際は木造のトラス組だが、ヴォールト天井を木造作で再現したもの・・とのこと。
西洋建築の様式の見た目を取り入れつつ、日本の伝統的な木造の手法を採用した、まさに和洋折衷の教会建築なのでしょう。
この日は、内部を見ることはできませんでした。






■紐差教会（ひもさし教会）

1929年（昭和4年）　　鉄筋コンクリート造　　設計・施工：鉄川与助
竣工当時は国内最大級の教会だったとのこと。明治18年に木造の教会堂を建設し、その後この教会を佐賀県馬渡島に移築し、新たに建てられたＲＣ造の教会。
数多くの教会建築を手がけた鉄川与助のＲＣ造教会２例目。
内部は撮影禁止でしたが、赤いじゅうたんが敷かれていて、西日が差しこむと、白い内部空間が赤く染まって感動的だそうです。








■生月大橋（いきつきおおはし）

平戸島と生月島を結ぶ道路橋。1991年開通。土木学会1991年度の田中賞を受賞。

いよいよ陸続きでは最西端に位置する生月島へ渡ります。
手前が平戸島、向こうが生月島です。



■山田教会
1912年（大正元年）　　　煉瓦造　　　設計・施工：鉄川与助

江戸時代の禁教によって、密かに信仰を続けていた「隠れキリシタン」。秘密の儀式をしなければならず、本来の儀式や教えが変容していきました。そして明治になって禁教が解かれた後も、一部の「隠れキリシタン」たちは本来のキリスト教に復帰することを拒み、変容した信仰を守り続けました。その人々のことを、江戸時代の潜伏信者とは区別するために「カクレキリシタン」とカタカナで表すのだそうです。

この山田教会は、カトリックに復帰した信者の為の教会。ファサードは当時木造でしたが、昭和40年代にＲＣ造で増改築されたとのことです。






「カクレキリシタン」のことなど、知らないことをたくさん残したまま、生月島をあとにします。
生月島側にある道の駅から、橋の写真を撮りました。



この穏やかな海に囲まれた小さな島で、たくさんの処刑が行われたのですね。私は無宗教の人間なので、信じ抜く教えとか命を懸けても守り通す教義ということが理解しがたいのですが、カクレキリシタンのことを、ネットでいろいろと調べていくと、その当時の信者たちもキリスト教の本来の教義を理解していたのではなく、西洋から伝わったキリスト教と日本古来からつたわえる先祖を守る精神が融合した、ある一種の民俗宗教だったのではないか・・・ということ。

命を懸けてキリストを守っていたのでなく、キリスト教の十字架を借りた先祖代々の教えと集団の義を守っていた・・・・ということなのでしょうか。


現代社会においても、イスラム教の宗派による、いろいろな恐ろしい事件が多発しています。私たちは「イスラム教」は悪だ・・・・と決めつけてしまいがち。民族や集団によって、時代や社会情勢によって、その守るべきものは変容し続けていて、そして、その守るべきものへの忠誠心や犠牲心が強く、反逆や寝返りに対しての制裁が厳しいほど、強く大きななにものかになってしまうのでしょうか。


生月島や五島、天草などの小さな島々の過去の痛ましい歴史を思い、宗教って何なんやろ・・・？とますます深みにはまっていくのでした。


その11につづく